開かずの扉というテーマでのこの作品、なかなかの意欲作だと受け止めました。
謎解きを感想でいってしまうのは野暮なので言いませんが、こういうオチかと面白く読めました。
「開かずの扉」というテーマ自体にある種のストーリー性がある中で、これは正攻法でそれに取り組んだ作品ですね。きちんとラストで「私」が何故にショートパンツにトレーニングシャツという服装だったのか、そして何故階段で音が鳴るのか、音色が次々変わるのかといったものが受け止められている上、なかなかに意表をつくラストだったと思います。
また、今作で着目したいのはDさんの筆力ですね。こういった観念的世界を説明するのはなかなかに難しいですが、きちんとした状況描写がなされていたおかげイメージをすることが出来ました。情報がゼロという状況からの少しずつの理解への道のりも自然な形だったと思います。
残念な点を上げるとすれば、まず一点。最初、主人公の性別をぼかして書いてあるのかと思いました。その発言とかから。しかし後半であっさり「お嬢様だったのか」と明らかにしているので、そういう狙いがあったのかなかったのか不明ですが、もう少しぼかすならぼかす、はっきりさせるならさせたほうがよかったかと思います。実際現実世界で女性が必ずしも女性らしい言葉を使うわけではないですが、文章化されるとどうもわかりにくいと思ってしまいます。世界そのものも手探りで、主人公自体がどういう存在かも手探りなので、その上性別的なものもあいまいというのは、ちょっとストレスを感じました。 二点目は、叙述の漢字の多さです。もう少しやわらかく書いてもよかったのではないかというのが正直なところです。話が話だけに。
以上が大体の感想です。先日チャットで話したことに付け加えてこんな感じですね。意欲作と受け取りました。星四つ。 |