以前にいまん殿の作品を読ませていただいた時。ふと感じた事と、今回はあまり違わぬ印象を受けたでござるな。 まず第一に、よく作り込まれている作品でござる。誤字脱字は少なく、話の流れも緩やかに、それでいて激流になるところは激流に。めりはりの付け方は巧く、活字でありながら映像的。そしてそこに欠点が潜んでいるとも言えもうそう。 魂が、足りないのでござる。
作品に対する主張の有無というのは、小説を文章の集合体と芸術と分化させる要素でござる。一流の作家になれば成る程、歴史に残る作品になれば成る程。激しく狂おしい魂がそこには込もる。それが皆無というわけではないのでござるが、もっともっとそれが欲しい。文章力にそれが付け加えられれば完璧でござろう。
作品自体は、オーソドックスな印象を受けたでござる。戦いもよくまとまっていて、力の見せ方、使い方が巧い。キャラに特にぶっ飛んだ個性はござらぬが、落ち着いた印象を受ける方々でござるな。拙者としては作品自体のテーマに異論もござるが、それは他人でいる以上当たり前。世界には人の数だけ思想があり、それは根本的な面では交わる事がないからでござる。総合的に見て、とても良くできた作品だと思うでござるぞ
最後に。残念な点がもう二つ。 一つは、あの長いあとがき。あとがきや裏設定がもてはやされる傾向が最近はござるが、小説なのだから書きたい事は作品に入れ申そう。内容がくどくなるかどうかは、その作者の腕の見せ所、というところでござる。 もう一つ。残念な事に、あまり怖くなかったでござる。話は良かったのでござるから、あえてホラーとすることは無かったのでは?幽霊や怪物を出すだけではなく、心理的に訴えかける怖さ、という物を使えば、んなもの出なくても怖い作品は出来るのでござる。
きつい事を書き申したが、にいまん殿は極めてレベルの高い文章書きさんでござる。是非とも、今後ともすばらしい作品を書き上げてくだされ。 |