今回も、長い感想になりそうなので、敬語で行かせていただきます。また、内容レベルでの話であって、細かい技術レベルでの話は控えさせていただきますので、ご容赦ください。 この作品を読んで感じたのは、追求する男の、必死さが良く出ている、という点です。求めても求めても得られない物。それでもそれを求めてあがく姿。 自分の感情を押しつけようとすれば、それはただの猟奇になってしまいますが、そうならないのは書き手たるレオ殿の手腕でしょう。また、音楽的な文章は、実に面白いです。文章のリズムという物は、私も重要だと思っているし、書くときに気にしてもいるので、参考になります。内容に満ち満ちた「愛」というのも、私の作品には足りない物ですし、この辺の描写は立派です。これだけ「愛」を書く事は私には出来ません。 ヒロインは思いきり普通の人ですが、それは却って良かったかも知れません。作品の読後感も良いし。 では、続いて欠点を。 個人的な印象としては、悪い魔法使いさんが嫌われるわけがよく分かりません。押しつけの感情は迷惑だという話も出ていますが、どの辺がそうなのか。或いはヒロインの好みに合わないのかも知れませんが、それはそれで少し可哀想です。 また、ルルの動機も少し分かりません。守ろうとする必死さは伝わってきますが、これも少し説明不足かと。守れなかった、というのはわかりますが…… そして、魔法使いさんが必死にヒロインを追い求めるわけも。どうこういう魅力があって、あのヒロインが良いのか。顔が好みなのか、それとも何か利益があるのか。輪廻転生を自在にするほどの大魔導師を、夢中にさせる物は何なのか。(転生すれば、当然姿は変わるでしょうし)また、彼を悪とするならば、怖気が走るほどの猟奇性があった方が良かったかも知れませんね。 要するに、魔法使いさんとルルで対象性を作ろうとしていますが、それが確保しきれていないように見えました。よく練られて、満ちている「愛」が生きれていないような感じです。 これが残念です。ただ、全体としては良くできた作品ですし、とても楽しむ事が出来ました。良作をありがとうございました。 |